今回は、心理的な刺激によっておこる障害(心の病気)やストレスについてご説明します。
わたしは過去に「うつ病の初期症状」を経験しました。それが、初期症状であったのか?うつ病が完治したのか?は未だにわかりませんが、問題なく生活を過ごしています。
過去の記事はこちらをご覧ください
うつ病の初期症状 自分の心の変化に早く気づいて!私の例をご紹介
ストレスは心理的に非常に負担になり、体調の変化にも影響を及ぼします。
ストレスについて
ストレスとは、もともと「歪み」を意味する物理学用語です。
生物学者セリエが1930年代に、この語を精神科学分野に応用して、外側から働いて人間に影響を与える「環境因子をストレッサー」それに反応して引き起こされた心身の変化をストレス反応と呼びました。
その後、ラザラスとフォルクマンが、これにコーピング(困難や問題を克服しようと努力すること)という変数を取り入れ、環境と個人との相互作用を強調する心理的ストレスモデルを提唱しました。
環境が直接ストレスを引き起こすのではなく、それを有害でありコントロール不可能であると認知することがその環境をストレッサーにして、ストレス反応を引き起こすということです。
各人によりストレスを引き起こす原因に違いがあるのは、それぞれの認知プロセスが異なるからです。
ストレスの原因の種類について
- 物理的ストレス…暑さ、寒さなど
- 生理的ストレス…睡眠不足、飢え、過労など
- 心理的、社会的ストレス…人間関係など
ストレスが人間の体に生じると、それを解消しようとしての防御反応から、疲れやすい・疲れがとれない・腹痛・下痢・便秘・不眠・イライラしやすいなど、さまざまな症状が引き起こされます。
ストレスは行動のエネルギーでもある
一般的にストレスというと、良くないものと思われがちです。しかし、ストレスを感じれば、そのストレスを解消しようとする反応が起こります。その反応が、やる気や次の行動を引き起こす原動力になることもあります。したがって、ストレスは行動のエネルギー源でもあるといえます。
しかしながら、ストレスを解消しようと頑張りすぎると、血圧が上がって脳や心臓に影響が出たり、タバコの量が増える、偏食になるなど二時的なストレスを生み出す危険性もあります。過度のストレスが有害であることは、間違いありません。
個人的に、ストレス解消の行動よりもストレッサーである根本を改善する行動が大切かと思います。ストレッサーを解消しない限り、ストレス生活が続くからです。
ストレスは免疫力を低下させる
私たちの体は「免疫」の仕組みによってウイルスや細菌などの病原体から体を守っています。しかし、現代人の生活では、免疫の仕組みが正しく働かない要因が増えています。
睡眠不足による睡眠の乱れ…睡眠に関わるホルモン(メラトニン)が十分に分泌されないと、体に活性酸素が過剰に増加し、がん細胞の増殖など悪い影響を引き起こすといわれています。
ストレスも免疫力を低下させる…ネガティブな気分や過度なストレスによってうつ状態になると、病原体と戦う抗体の分泌が低くなるといわれています。
*強いストレスにより睡眠障害・睡眠不足になり「ストレス→睡眠障害→ストレス…」とループしてしまうと抜け出すのが難しくなり、うつ状態になる可能性もあります
心の状態から引き起こされる病気について
心の病気は、身体にもさまざまな影響を与えます。人間の精神活動を担う大脳が、ストレスなどを受けて、身体の働きをコントロールする自律神経のリズムが乱れることが原因です。
わたし自身も過度のストレスからうつ病の症状を感じた経験があります。ストレッサーを断ち切り回復しましたが非常に辛い日々でした。
性別とストレスの関係では、一般的に柔軟性のある女性のほうがストレスに強いといわれています。ただし、女性は対人関係でストレスを受けやすく、生きる気力や自信を失ったり、疲れやすく、何もしたくなくなるなどの抑うつ状態に陥りやすい一面も持っています。
心の状態によって引き起こされる代表的な病気を見ていきましょう。
摂食障害
摂食障害には「神経性無食欲(拒食)症」と「神経性大食(過食)症」の2つの病態があり、青年期の女性に多く見られるようです。
摂食障害になりやすい人
- 10代半ばから20代の女性
- いわゆる「良い子」でまじめな人
- 完璧主義者
- 容姿になんらかのコンプレックスがある人
無理なダイエットをきっかけに、食欲をコントロールできなくなるといわれています。最近の若い女性に増えており、本人は自分が異常であると認めていないことが多いようです。
摂食障害から抜け出すひとつのきっかけとして「良い子の自分をやめて自由でありのままの自分を出していくこと」といわれています。
虚血性心疾患
虚血性心疾患とは…冠動脈の閉塞や狭窄などにより心筋への血流が阻害され、心臓に障害が起こる疾患の総称である
ウィキペディアより引用
アメリカのフリードマンとローゼンマンは、虚血性心疾患にかかりやすい人の共通の行動パターンを指摘し、それをタイプA行動と呼んでいます。
- 高い達成努力の意識(目標に向かい過剰なまでに努力する)
- 競争心が強い
- 時間的圧迫性が強い(せっかちでイライラしている)
- 攻撃性が強い
以上の行動特性が見られます。
タイプA行動の特性にあてはまる人は、慢性的なストレスを避け、リラックスして過ごす時間をつくるようにした方が良いでしょう。
ガンと心理的な関わり
心理学者のリディア、テモショックは、ガン患者には次のような3つの性格傾向が共通して見られることを発見し、ガンを意味するcancerの頭文字から、タイプC性格と名づけました。
- 対人関係に傷つきやすく、孤独に逃げ込みやすい
- 悲しみや不安などの不平不満をいわず、周囲に合わせようとする
- 慢性的に抑うつ的
- 幸福度が低い
- 社会的に孤立しがち
以上の特徴があるといわれています。
過敏性腸症候群
職場や家庭でのストレスや人間関係のトラブル、過労、睡眠不足などが原因で起きる腸のトラブルを過敏性腸症候群といいます。
健康な腸には、ビフィズス菌などの善玉菌が生息しています。ところが、ストレスが過剰になると、これに代わってウェルシュ菌や大腸菌などの悪玉菌が増えて便秘や下痢を引き起こします。
わたし自身、年間で快便の時がなく慢性的な下痢なので、この症状にあてはまります。
几帳面で神経質、緊張しやすい性格の人に多い、いわゆる身体症状に隠されたうつ病だといわれています。
精神疾患
WHO(世界保健機構)では、「健康とは単に病気がないというわけではなく、肉体的にも精神的にもそして社会的にも意欲を持って生きること」と定義されています。
しかし現代を生き抜いていくには数多くのストレスや悩みはつきもので、そうした状況に適応できないために心身の不調をきたしている人々がたくさんいます。
私達が日常で何気なく使っている「精神病」という言葉は精神病理学的分類に従うと一般的に次のように分類されます。
- 外因性精神障害…脳腫瘍などの脳障害によるもの、および尿毒症、肝疾患などの身体疾患によるもの
- 心因性精神障害…人格障害や不安神経症、強迫性障害などの神経症
- 内因性精神障害…統合失調症や気分障害
当サイトでは、精神の病いとして有名な統合失調症や気分障害、不安神経症などについて、DSM-Ⅳ-TR(アメリカ精神医学界の精神疾患の分類と手引き)の定義に従って簡単に説明します。
統合失調症
統合失調症は、日本では2002年まで「精神分裂病」と呼ばれてきました。青年期に発症することが比較的多いので遺伝的要因が強いと考えられてきましたが、その原因はいまだはっきり解明されていません。
統合失調症の特徴的症状としては次のものがあげられています。
- 妄想
- 幻覚、幻聴
- まとまりのない会話
- まとまりのない一貫性に欠ける行動
- 無表情、無関心
以上のような症状がすべてあらわれるのではなく、人によって様々に組み合わさって発症するため、統合失調症は大きく次の3つのタイプに分類されます。
- 解体型(破瓜型)…意欲の減退、感情鈍磨、自閉傾向などの陰性症状が進行する型です。思考や会話の不統合(解体)が見られます。
- 緊張型…顕著な精神運動性障害を特徴とします。目的もなく動き回り周囲の刺激に反応しない「昏迷」、指示に自動的に服従する「命令自動」、あらゆる指示に抵抗する「拒絶反応」などが見られます。
- 妄想型…前の2つの型に見られる症状は少なく、妄想と頻繁な幻聴にとらわれている型です。発症が比較的遅く、症状が穏やかなときでの生活機能は他の型よりも良好です。
気分障害
一般的に躁うつ病と呼ばれることが多い精神疾患の1つです。気分が落ち込んだり(抑うつ状態)もしくは異常に高揚する(躁状態)といった気分の変化を症状としています。
躁うつ病は躁状態とうつ状態が交互にあらわれるもので、正式には「双極性気分障害」といいます。
また、躁状態のみを示す躁病、うつ状態だけを示すうつ病もありますが、うつ病が約80%を占めています。
うつ状態における主な症状
- 暗い気分になり興味や喜び、楽しいと思えることが少なくなる(笑えない、笑顔がなくなる)
- 活動性が下がり、何をするのも億劫になる
- 睡眠障害(早朝に目が覚める、時に過眠)
- 食欲が無くなる(体重の減少、味を感じない)
- 性欲の減退
- 症状が1日の中でも変動する
躁状態における主な症状
- 爽快気分(疲れを覚えない爽快感が持続)
- 多弁で話題が豊富だが、話がすぐ脱線する
- 活動性が非常に高くなり、抑制がきかなくなる
- 睡眠時間の短縮(しばしば早朝に目覚めるが、不眠を訴えない)
治療法は薬物療法が中心なようです。気分の障害が主な症状なので、その状態が治ると平常に戻ります。ここが、統合失調症との大きな違いです。
不安障害
気がかりなこと、心配なことは誰にでもありますが、誰もが感じる不安の程度をはるかに超えると、日常生活に支障をきたします。こうした障害を不安障害と呼んでおり、次のようなものが含まれます。
全般性不安障害…身の回りでおきる様々な出来事に対して異常なほどの不安を示し心配し過ぎる
パニック障害…突然、動悸がしてドキドキという心拍数が上がり、汗が出て息苦しくなり気が遠くなる症状。こうした症状を何度か経験すると、また同じことが起きるのではないかと不安になり(予期不安)乗り物にのったり、人と接したりすることが出来なくなる場合もあります。
また、逃げたくても逃げれない状況や場所にいるときの強い不安を「広場恐怖」といいます(わたしは電車やバスが少し苦手です)
強迫神経症…自分で不合理だと思うのに強迫的にある行為を繰り返します(例 手を何度も洗うなど)
身体表現性障害(心気症)
病気でもないのに自分の体調の変調にこだわり、苦痛を訴える症状のことです。頭痛やめまい、吐き気や疲労などを訴えて病院を転々としますが、どこにも病気がみつからず、自分で自分を追い込みます。
解離性障害
私たちは、日頃は意識することのない無意識とか潜在意識というものを持ち合わせています。解離性同一性障害では、この心の中の隠された部分が別の人格となってあらわれます。「多重人格」「二重人格」と呼ばれていました。
解離性障害については詳しくこちらで解説しております。
心理学入門「ユングの心理学」コンプレックス 河合隼雄著 書評
非常に奥深い内容なので、今の記事では触れる程度にしておきます。