「症候群」とは、同時に起きる一連の症候のことで、原因不明ながら共通の病態(無自覚症状・検査所見・画像所見など)を示す患者が多い場合に、そのような症状の集まりに名をつけ扱いやすくしたものです。
シンドロームの原義は「同時進行」であり、同時発生様の社会現象などを指す用語としても使われています。
症候群は、その時代の社会背景の中から生まれたものが多いようで、時代が移ると「新しい症候群が生まれる」という傾向が見られます。
現代の代表的な症候群をいくつかご紹介します。
無気力症候群(ステューデント・アパシー)
1960年代後半、学業に興味を示さず、学校にも行かず、新しい感動を求めて何かに挑戦しようとする意欲もなく、対人関係を恐れてひきこもりがちな学生が注目され、ステューデント、アパシーと呼ばれました。無気力症候群ともいわれます。
このような学生の存在が、青年期延長説のひとつの根拠と考えられました。
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心理学と人間の一生からみる「心身の変化について」知っておきたいこと
青年期と成長
ステューデント、アパシーの原因として、有名大学に入学することがゴールであり、その後、何をすれば良いかわからない事があげられています。
学生に限らずサラリーマンでも、一流企業に就職することが目的になり、同様にサラリーマン、アパシーになってしまうこともあるようです。
燃え尽き症候群(バーン・アウト)
高い理想に燃え、仕事に真剣に取り組んでいた人が、自分がどんなに努力しても期待通りの結果が得られないとわかったとき、目標を失い、精神的、身体的な「燃え尽き症候群」になります。
燃え尽き症候群の発端は、1970年代半ばのアメリカで医師や看護師、教師、などの専門職の人々が疲れを訴えたり、無感動や無気力などの心身症状を訴えるケースが増加したことです。
そのきっかけとなったのは1971年のベトナム戦争に従軍したカレー中尉の事件といわれています。
燃え尽き症候群の特徴
- 思いやりがなくなる
- 仕事への意欲がなくなり、機械的に過ごす
- ストレス性の潰瘍
- アルコール、薬物依存
- 不眠症
- 精神的、身体的病気を招く
以上の点から最悪、自殺したり、夫婦間の問題とは別に離婚する人もいます。
荷下ろし症候群
いわゆる「五月病」とは、難関を突破して希望の大学や会社に入った新入生や新人社員が、5月頃になると勉強や仕事に身が入らなくなり、無気力な状態に陥ってしまうことをいいます。
また、5月に多くみられる傾向ではありますが、それ以外の月にみられるケースもあるため、こうした現象を荷下ろし症候群といいます。
荷下ろし症候群の原因は、大学や会社に入ることを最終目標にしてきたため、目標達成後に何もやることがなくなってしまうといえ目標喪失感によります。
ピーターパン・シンドローム
誰もが知っている「ピーターパン物語」ですが、アメリカの精神医学者カイリーは、思春期以降の男子に多くあらわれる社会的不適応現象をピーターパン、シンドロームと命名しました。
- 社会的に自立したくない
- 大人になりたくない
以上のような「成熟拒否」のことを意味しています。
こうした人は、現実から離れた夢の国で空想を体現しようとします。現代のアイドルブームの背景に潜んでいる症候群の一因かと思います。
青い鳥症候群
メーテルリンクの有名な小説に「青い鳥」があります。それは主人公のチルチルとミチルが幸せの青い鳥を追い求めてさまよい歩きますが、結局、青い鳥は自分の家にいたという話です。
そのことから、今の自分は本当の自分ではないと思い込み、もっと自分に合った仕事があると信じ、職を転々と変えていく若者たちに見られる傾向を青い鳥症候群といいます。
社会性を養う訓練をしないまま大人になってしまい、忍耐力に欠け、我慢できず、失望し離職してしまうという特徴があります。
退避症候群
若者がテレビやゲーム、スマホを楽しむことで長い時間を1人で過ごし、他人との接触を避ける傾向をいいます。
現代の激しい競争社会から降りて過剰な活動をやめてしまいます。
代理ミュンヒハウゼン症候群
養育者が健康な子どもに危害を加え、病人に仕立て病院に連れて行き、自分が献身的に介護する姿を演出して見せるという、特殊型の児童虐待のことです。
近年増加傾向にあるらしく、注目されている症候群です。
ちなみミュンヒハウゼンとは、18世紀にいた、ほら吹き男爵の名前で、1951年ロンドンのアッシャーという医師が名付けました。
トラウマ
個人的に処理できないくらい強いショックやストレスを受けたとき、その経験が抑圧され、心の傷となり、その影響がいつまでも続くことがあります。これを精神分析用語でトラウマといいます。
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