心理学入門

心理学と人間の一生からみる「心身の変化について」知っておきたいこと

誕生から死に至るまでの心身の変化について今回は考えてみたいと思います。

発達心理学とは「人間が生まれて死ぬまでの心身の変化や行動」などを解明するものです。人として母親の胎内に受胎したときから死に至るまでの長い間の発達のことを「生涯発達」といいます。

 

コンテンツ 非表示

子供の発達における主な5つの特徴

赤ちゃんと子供が寝てる

「人間は生理的に早産の状態で生まれてくる」とスイスの動物学者ポルトマンは述べており、この言葉は人間が他の動物より未熟な状態で生まれてくることを意味しています。

ポルトマンは哺乳動物を2つに大別しました。

離巣性(りそうせい)

  • 比較的長い妊娠期間を経て脳髄が発達して生まれてくる
  • 生まれる子供の数が少ない
  • 生まれた子供がすぐに親と似た行動をとる
  • ウマ・サルなどの高等哺乳動物

就巣性(しゅうそうせい)

  • 妊娠期間が比較的短く脳髄が未成熟で産まれてくる
  • 多数の子供が1度に生まれる
  • 感覚器が未成熟(目がみえてない・耳がきこえていないなど)
  • リス・ウサギ・イタチなど

人間は「離巣性」の特徴がありながら、未熟な状態で生まれ、出生後1年で歩行や言語が可能になります。人間が他の動物に比べて未成熟な状態で生まれてくることを「生理的早産」「高等哺乳」「子宮外の胎児期」などといいます。

子供の体の各部分は「異なる時期に異なる割合」で発達する

脳神経系の発達…乳児期に著しい発達(6歳で脳重量は成人の90%に達する)

頭部と全身の比率

  • 生まれた時…4頭身
  • 10代になると…8頭身へと近づく

子供は頭部から下部へと発達する

例えば乳児をうつ伏せに寝かせると段階を経て発達していきます

  • 生後1ヶ月頃…頭を持ち上げ
  • 生後2ヶ月頃…肩までを腕で支えられる
  • 7か月頃…お座り
  • 12ヶ月頃…ひとり立ちができる

子供は体の中心から末端へ発達する

中心とは胴体から、肩→腕→指先へと末端への方向性で発達していきます。

寝返りをうったり、腕を振り回すことができるようになってから、手のひら全体でつかむことができるようになり、指でつまめるようになります。

子供の発達は連続的である

例えば「急にひとり歩きを始める」ような突然の発達はありません。

発達は成熟へ向かって段階をふみながら少しづつ進みます。

子供の発達には個人差がある

ひとり歩きを例として、生後10ヶ月~16ヶ月の間で発達の速度には個人差があります。

 

以上にあげた特徴は、遺伝的要因と環境要因とが複雑に重なり合いながら、人間の発達を促進していきます。

愛着と感情 人間関係の発達

女の子がぬいぐるみを大切にしている

Pexels / Pixabay

人間関係の基礎は乳児期

子供が順調に発達していくためには、愛情や信頼関係を持っていることが前提となります。このような人間関係の基礎となるのが、乳児期に形成されるアタッチメント(愛着)です。

一般的に、アタッチメントは子供が母親に対して持つものですが、対象は必ずしも母親とは限りません。小児科医であったボウルビィによると、アタッチメントは乳児が泣いたり笑ったりする行動に、タイミングよく反応してくれる人に対して成立するようです。

ボウルビィの愛着の発達過程

  1. 誰に対しても同じような反応を示す(誕生から生後8~12週頃まで)
  2. 特定の相手に愛着を抱きはじめる(生後12週頃から6か月頃まで)
  3. 特定の人に愛着を持ち、常にその人と一緒にいたいという態度を示す(6か月頃から2・3歳頃まで)
  4. 離れていても心の中に特定の人との絆ができてくる(3歳頃から)

微笑みの発達段階

子供の微笑みにも発達段階があります。

生後5週間目までは「自然発生的で、反射的な微笑みの段階」であり、お腹がいっぱいで気持ちがいいといった生理的満足感に起因し、睡眠時によくあらわれるものです。これを「無選択的な社会的微笑の段階」といいます。

3か月頃になると「選択的な社会的微笑の段階」になります。この頃から、あやしかけに対して目を細めて微笑むようになり、微笑みは人とのコミュニケーションの大切な指標になっていきます。

ハーローの「接触の快」理論

赤ちゃんはぬくもりで愛着を抱く

ウィスコンシン大学霊長類研究所のハーローは、赤毛ザルの子ザルを使った実験をしました。

檻の中に母ザルの代わりに2体の人形を置く

  • 円筒形の胴体に針金をまき、哺乳瓶からミルクが出る人形
  • 円筒形の胴体をビロードの布で包み、ミルクは出ない人形

結果として子ザルは、ほとんどの時間を布製の人形に抱きついており、ミルクを飲む時だけ針金人形に近づきました。

子供は身体的な接触(スキンシップ)と母親のぬくもりによって、母親に愛着を抱くようになるのです。

ローレンツのインプリンティング理論

ノーベル賞を受賞した世界的に有名な動物学者ローレンツの有名な理論

孵化してすぐに開眼し歩行できる鳥類は、24時間以内に「動くもの」に対して後追い反応を示すというものです。それをインプリンティングと呼び、日本語で「刻印付け」「刷り込み」と呼ばれています。

ローレンツは、この現象を人間の発達にも当てはめられると考えています。人間にも生後しばらくの間に親であることが刷り込まれる「敏感期」が存在し、その敏感期に親と子の絆もでき上がると考えられています。

*母親との愛着関係(絆)があるから、人見知りするようになります

子供の感情は2歳までに急速に発達する

感情発達の研究をしていたブリッジスは、新生児から2歳までの乳幼児についての観察記録から、情緒の発達段階を明らかにしています。

「情緒」とは、喜怒哀楽のような主観が強く揺り動かされた状態のことをいいます。

*情緒と似た言葉には「感情」や「情操」があります

乳幼児期

青空と未来への道

naturalogy / Pixabay

かつて、赤ちゃんは生まれてから1ヶ月くらいは目が見えないと考えられていました。しかし今では、赤ちゃんは生まれて間もなく人の顔を識別していることがわかっています。生まれて間もない赤ちゃんでも、顔や同心円を見つめる時間が長かったのです。

心理学者のファンツの実験によると、赤ちゃんは「幸せ」「悲しみ」「驚き」の3つの表情を区別して、モデルと同じような表情をつくることができたといいます。

子供の自己の確立

精神医学を学んだマーラーによると、生後5か月から3歳ぐらいまでの間に子供は母親から分離し、個体としての自立意識を獲得していきます。この時期の分離~個体化の過程は、4段階に分類されています。

  1. 分化期(生後5~10か月)自分と他人の区別をする時期
  2. 練習期(生後10~16ヶ月)母親を軸として行動範囲を決める時期
  3. 再接近期(生後16~25か月)母親に近づいたり離れたりを繰り返して心理的距離を見つける時期
  4. 個体化の確立と対象恒常性の萌芽期(生後25~36か月)母親が常にそばにいなくても、自分の中に情緒的に安定した「ほどよい母親像」を確立させ、自己の一貫性を獲得していく時期

子供から大人までの知的発達の過程

ヒトは生まれたときから知的発達をはじめると考えたのはスイスの心理学者ピアジェです。彼は0歳から大人までの発達を4段階に分け、それぞれの時期には主に次のような特徴があると述べています。

  1. 感覚運動期(0~2歳)人間の生得的な反射行動(原始反射)
  2. 前操作期(2~6歳)思考の基準が自分にある自己中心性の時期
  3. 具体的操作期(7~11歳)論理的に物事が考えられるようになる
  4. 形式的操作期(12歳~成人)仮説を立て論理的に物事が考えられるようになる

知能と創造性の関係

創造性は、与えられた情報からさまざまな新しい情報を作り出す「拡散的思考」と密接な関係があります。(思考の柔軟性・ひとつの事柄から思考を飛躍・発展させたりする時に使われる)

知能は「記憶再生能力」による傾向が大きく、正しい解答に向かう「収束的思考」に関係しています。(知識量に規定される・一定の問題を解決する時に役立つ)

知能が高いと創造性が高いというわけではなく、逆も同じであるようです。

創造性が高い人の特徴
  • 複雑な図形を好む
  • アンバランスなものを好む
  • 精神構造が複雑(会話が飛躍的に発展し周囲がついていけない)
  • 大人の(例:先生)価値観に順応しにくい
創造性を開発するのに大切な事
  • 日頃から経験を豊に持つこと
  • 基礎をしっかり学ぶこと

人格的知性の知能指数(EQ)

心理学者のゴールマンは、人間が幸福な生活を送るには頭の良し悪しだけではなく「人間性が豊かである」必要があると指摘し心の知能指数(EQ)を提起しました。彼はよりよい人生を送るには次の5つが大切であると述べています。

  1. 自分の情動を知る(自分の感情の原因を理解し対人関係の中で自分の方向づけを行う)
  2. 感情をコントロールする(怒り・口論・攻撃・イライラを抑える)
  3. 自分を動機づける(目標達成に向かい頑張る、自信・希望をもち忍耐する)
  4. 他人の気持ちをくみ取る(他人の立場を理解・共感・相手の話をよく聞く)
  5. 人間関係をうまく処理する(仲間意識・協調性がある)

これからの時代、社会で成功するためには相手の気持ちをくみ取り、人間関係を円滑に進めるEQを高めることが大切だといわれています。

やる気と行動の関係性

男性が夕焼けをみて瞑想している

brenkee / Pixabay

「やる気」は心理学的には、達成動機といいかえられます。達成動機とは、難しいことでも高い水準を目指して自分の力でやり遂げようとすることだといえます。

内発的動機づけ

人間が本来持っている興味ややる気を刺激して行動を起こすことを内発的動機づけといいます。

 

外発的動機づけ

他者や環境からの賞や罰によって行動を規定しようとすることを外発的動機づけといいます。

外発的動機づけは、一時的に効力を発揮しますが、人間が本来持っている興味ややる気を逆に低減する原因になることがあり、行動を長続きさせません。

 

自己成就予言(ピグマリオン効果)

自己成就予言とは、他者から得た情報によって自分自身にある期待を持つと、自己の言動がその期待に沿ったものに変化していくことです。

例えば、歌が苦手な子に対しても「前より上手くなった」「声がかわいい」など言い続けると、本人が「歌の才能あるかも」と思い、歌に対して積極的に取り組み無意識のうちに努力するようになります。この結果、本当に歌が上手くなります。

「褒めて育てよ」といいますが、自己成就予言をよい方向へ促すことは、人の言動に好ましい変化をもたらすのです。

 

古典的条件づけ

「パヴロフの犬」…犬にベルの音を聞かせると同時に、エサを与えるという実験を繰り返しました。すると、犬はベルの音を聞くだけで、エサを与えなくても唾液を出すようになりました。パヴロフはこれを「条件反射」と名づけ、条件反射が用いられた学習を古典的条件づけといいます。

 

オペラント条件づけ(道具的条件づけ)

アメリカの心理学者のスキナーは、自発的な行動と反応による学習効果を証明しています。

  1. レバーに触れるとエサが出るスキナーボックスと呼ばれる実験装置にネズミを入れる
  2. 偶然レバーに触れエサを食べるネズミ
  3. ネズミがお腹が空くとレバーを押すようになる(学習行動)
  4. レバーを押してもエサが出なければ行動をやめる

レバーという道具を押す動作が条件になっているため「道具的条件づけ」、またはネズミの自発的行動から「オペラント条件づけ」と呼ばれています。

 

学習性無力感

心理学者のセリグマンが提唱した「学習性無力感」

ある状況のもとで何度も何度も失敗の経験を重ねていると、自分がいくら頑張ってもその失敗を回避することが難しいという「あきらめ」に近い意識と行動様式が学習されることを学習性無力感と呼んでいます。

否定的なことばかり言われたら、やる気がなくなりますよね。

 

子供のしつけ

青空にハートの風船が浮かんでいる

MabelAmber / Pixabay

親の態度が子供の性格に影響する

養育者、一般的には親が子供に対してとる態度や行動のことを「養育態度」といいます。とくに親の養育態度は、子供の性格形成に大きな影響を与えていきます。

養育態度による傾向

  • 親が子供を甘やかし過ぎる→わがままで神経質な子供
  • かまいすぎ・過保護→臆病で依存心の強い子供

子供にとって親は一番身近なモデル

アメリカの心理学者バンデューラは、子供は大人がこうしなさいということはしないで、むしろ大人たちがやっていることをマネするものだといっています。

子供は、教えられなくても周りの誰かを観察し、模倣しながら学んでいくもので、これを「モデリング」といいます。子供にとって、親は一番身近なモデルです。(例 ままごとでは親の様子がでます)

このモデリングを使い「しつけ」することも可能です。

例えば

「お兄ちゃんを見習いなさい」

「おかあさんといっしょに歯磨きしよう」など、他人や自分の行動を見せ、子供に覚えさせていきます。

 

子供は遊びの中で社会のルールを身につける

人間の発達や成長段階において、6歳~12歳未満までを児童期と呼びます。この年齢の子供たちは、別名ギャング・エイジ(徒党時代)とも呼ばれています。

  1. 1人遊びをしていた子供
  2. 気の合う子供同士で徒党を組む
  3. 秘密の遊びや他のグループと対決するなど

子供たちはこうした仲間との遊びを通じて、他人との接し方や協調性などを学んだり、さまざまな対人関係を経験していくことになります。こうしたギャング・エイジの遊びは、社会性を身につける第1歩です。

社会性とは、自分を取り囲む社会に適応できる性格や、その集団規範にのっとって行動できることを指します。この社会性を身につける過程を社会化といいます。

時代の変化により消えつつあるギャング集団

最近(2019年)の子供たちは外で遊ぶことをしなくなり、少人数でテレビゲームなどをして遊ぶ傾向にありギャング・エイジの集団は消えつつあるようです。

外で遊ぶことには、各々の遊びにルールがあり子供たちの中でも得手不得手がありました。

  • 各々の遊びのルールを守る社会性
  • 子供たちの得手不得手を尊重する気持ち

などは、テレビゲームの一つのルールでは得難いことです。仲間との強い関わりをもつことは、社会生活の基本的なルールを学ぶ機会であると同時に、親からの心理的自立を実現するきっかけにもなっています。

テレビゲームの良くない点として「リセットできる」こともあります。人生を生きていくことにおいて、失敗したらやり直せばいいのですが、人生をリセットすることはできません。そのような点から12歳以下の子供には、社会性を身につける遊びをさせたいところです。

子供の成長に反抗期は欠かせない

第一反抗期は正常な発達の証し

人間の成長段階で、自我意識がはっきりしてくるのは3歳頃だといわれます。しかし、自分以外の誰かと比べて自己を認識しているわけではなく、この段階では非常に自己中心的な自我といえます。

子供は自己中心的な欲求をかなえようと行動し、親などから叱られたり注意されることが多くなります。こうして起こる衝突が、3歳前後に見られる第一反抗期です。

この時期に反抗を示さなかった子供は、6歳からの児童期に入って意志薄弱になり、逆にはっきり反抗を示した子供は、後に正常な意志力を示したという研究結果もあります。

つまり、幼児期の反抗期は、人間が正常な発達をするためにも必要な反応だといえます。

第二反抗期は大人への登竜門

第二反抗期といわれるのが12~20歳代半ばとされる青年期です。青年期は、すでに子供ではないが、まだ一人前の大人ともいえない、子供と大人の間で揺れ動く時期といえるでしょう。

とくに青年前期では、児童期の合理的思考や社会性の発達のアンチテーゼとして、すべてに否定的・批判的・破壊的になりがちです。これはネガティブィズム(否定的態度)と呼ばれ、親や教師に反抗的な態度や行動を示すことをいいます。

子供から大人へ脱皮しようとするのが第二反抗期です。

大人であるための条件

自立には3つあります

  1. 精神的自立
  2. 経済的自立
  3. 生活の身辺に関する自立

大人であることの基本的な条件は精神的自立です。

アメリカの心理学者オルポートの「精神的自立をはかる条件」

  1. 自己意識の拡大
  2. 他人とのあたたかい関係
  3. 情緒的安定(自己受容)
  4. 現実的知覚・技能・課題
  5. 自己客観視
  6. 人生を統一する哲学

子供の発達のつまずき

軽度発達障害は早めの発見と適切な援助が大切です。

軽度発達障害については心理学と離れてしまうので、こちらのサイトをご紹介します

「発達障害に生まれたら」

サイト管理者様自身が発達障害として生活してこられ、30代で発達障害だと気づかれたようです。

幼児期に周りの大人が早く気づいてあげれれば、人生は違うものになるのではないでしょうか。

青年期の心身の変化について

目が印象的な女性

StockSnap / Pixabay

アイデンティティの確立

青年期における重要課題といえるのがアイデンティティの確立です。

アイデンティティという概念は、アメリカの精神分析学者エリクソンが提唱しました。日本語では「自我同一性」「主体性」「自己の存在証明」などの訳語が使われています。私とは何か、あなたがあなたであることを証明するために求められるものがアイデンティティなのです。

アイデンティティは成長段階の中で徐々に確立していくもので、それぞれの時期で達成しておくべき課題があります。

青年期までに達成しておくべき課題3つ
  1. 基本的信頼
  2. 自律性
  3. 積極性

青年期におけるアイデンティティの確立は、子供時代に達成されてきた課題の統合ともいえるのです。

第二次性徴

青年期における急激な身体的な発達と成熟が第二次性徴です。

男子では

  • 肩幅の広がり
  • 筋肉の発達
  • ひげや体毛の発達
  • 咽頭の発達(声変わり)
  • 射精など

女子では

  • 乳房の発達
  • 腰幅の広がり
  • 皮下脂肪の発達
  • 初潮など

第二次性徴期に身体的変化が起きることによって、青年は自分自身に関心を向け、これまでの生き方を見つめなおし、将来の自分を考えるようになります。

モラトリアム

モラトリアムとは、もともと支払い猶予期間を意味する経済用語です。エリクソンは、この言葉を心理学の領域に転用して、青年が社会の責任や義務を負うことを免除されている状況を表現しました。

複雑化した現代社会では、価値の多様化などによってアイデンティティの形式が十分にできずに、モラトリアムを卒業できない青年層も増えています。

モラトリアム人間は現代社会の象徴?

精神分析学者であった小此木啓吾氏は、アイデンティティを確立しない心理構造は、青年だけでなく現代社会の大人の一般的な特徴であると指摘し、そのような人間を「モラトリアム人間」と呼んでいます。

モラトリアム人間の特徴
  1. 半人前意識から、何でも自分の思いどおりになるという全能感意識へ
  2. 禁欲から解放へ
  3. 修業感覚から遊び感覚へ(遊びや余暇の充実)
  4. 社会の価値観や行動様式に同一化するのではなく一歩距離をとる隔たりへ
  5. 自立への渇望から無意識・しらけへ

青年期延長説

かつて青年期は12~22歳頃までを指していましたが、青年期を卒業できない現代人が増えています。

青年期の終期が延長される理由

  • 第二次性徴の出現が早くなる傾向が見られること(発達加速現象)
  • 女性の高学歴化・社会進出にともなう晩婚化
  • 社員として働かないフリーターの増加などの理由

成人期

心理学者のユングは人生を太陽の変化に例えています。彼は40歳前後を「人生の正午」と呼んでおり、太陽が頭の真上を通過する時期だと表現しています。

太陽は正午を過ぎると、その影は今までとは逆の方向に映し出されます。これは生まれてから中年期までに築いてきた価値観や理想をもとに、次の後半の人生を自分らしく生きていくことが大切であることを示唆するものです。

この時期になると身体的機能は徐々に低下しはじめ、多くのストレスを抱える人々が増加し、中年男性の自殺者が多くなる傾向もそのあらわれといえるでしょう。

成人期の発達課題とは?

人間の発達課題について提起したハヴィガーストは、個人が健全に成長していくには、ライフステージそれぞれに達成していかなければならない課題があると考えました。

彼は成人期を大きく2つの時期に分けました

  • 18~35歳を「成人前期」(主に結婚・子供が軸)
  • 36~65歳までを「成人後期」(高齢期をみすえた精神的安定・充実をめざす)

以上のように発達課題を提起しましたが、現代の社会は多様化が進み、こうした枠組みで成人期を捉えることが難しくなってきました。

医療の発達による寿命の延長により成人期の発達課題や人の在り方はこれからも変化していくことでしょう。

成人後期とストレス

成人後期である36~65歳を「中年期」といいますが、人生の中で最も充実した時期である反面、さまざまな危機(クライシス)をはらんでいる時期でもあります。

成人後期の心境や体調の変化

  • 体力や気力に衰えが見え始める
  • 職場・家庭で責任が増大
  • 仕事上の自信・希望にかげりが見えたり挫折など

以上の点から、中年期は働いている人にとって内面的な幻滅と反省にぶつかり、気落ちすることが多い時期と考えられます。その上複雑化する現代社会では、職場環境にも精神的なストレスが多くなっています。

成人後期の更なる問題

  • 子供の自立
  • 夫婦間の問題
  • 親の介護など家庭内の問題
  • 更年期障害などの身体的な問題(男性にも増えています)
  • 仕事・職場の人間関係のストレスからのうつ病
  • 子供自立から熟年離婚

中年期クライシスから脱却するには?

人は中年期に、それまで自分が自信をもっていたこと、たとえば運動能力や健康・仕事などに疑問を感じ、それを再構築する必要に迫られることになります。

中年期クライシスから脱却するためには、人生の折り返し点としての自己反省から、気力の再活性化をはかり、新しい勉強に積極的に取り組む姿勢や努力が大切です。

高齢期

老人が思い悩んでいる

Devanath / Pixabay

生涯発達における「高齢期」のとらえ方

日本が世界一の長寿国であることはよく知られており、これからは100歳時代ともいわれるほどです。しかし老いは誰にでもやってきます。高齢期を知ることで心が満たされる生き方を考えてみましょう。

ライチャードは高齢者のパーソナリティを5つに分類しています。

高齢期に見られるパーソナリティの分類

円満型

過去の自分を後悔することなく、未来に対しても現実的な展望を持っているタイプ

安楽椅子型

受身的・消極的な態度で現実を受け入れる。引退後は、安楽に暮らそうとするタイプ

装甲型

老化への不安から、若い時の活動水準を維持しようとするタイプ

憤慨型

自分の過去や老化の現実を受け入れられず、その態度が他人への非難や攻撃という行動であらわれるタイプ

自責型

憤慨型とは反対に、自分の過去の人生を失敗だと考えて自分を責めるタイプ

幸福な老いを迎えるための3つの理論

高齢期には、心身や社会環境に色々な変化が訪れます。それらに適応しながら、幸福な老いを迎えるための考え方が次の3つの理論です。

高齢期の活動理論

男性はとくに、一生のうちに仕事が占める割合が多いものです。そのため退職後に目的を失い、生活への不適応反応を示す場合があります。

そこで、仕事によって得られた充実感を埋められる対象を探し、新たな交友関係を築き、退職前の活動水準を維持することが心豊かな高齢期を送ることにつながるとする考え方です。

高齢期の離脱理論

残り少ない人生をより有意義に、自分らしく生きるために、仕事を離れようとする考え方です。個人的な趣味や目的を持ち暮らす感じです。この理論では、社会への参加水準が低いほど、個人の幸福感は高いと考えられています。

高齢期の継続性理論

高齢期の人々は、社会環境や身体の変化に委ねているわけではなく、長い人生の中で確立してきた要求に沿って環境を選択し続けているという考え方です。

つまり、先ほどのパーソナリティの分類のタイプに依存するため、幸福な老いは各人のタイプによるという理論です。

 

今回は、人の一生の心身の変化について考えてみました。

考えるほどに「人は1人で生きることができない」他者との関わりによる影響が理解できました。

人生における心身の変化について理解し、他者や自分自身を大切にできればと思います。

-心理学入門

Copyright© ココロのチカラ , 2024 All Rights Reserved.