普通の人とは違った偏った考え方や行動のために、社会生活がうまくいかなくなってしまう状態を「パーソナリティ障害」とよんでいます。
ドイツの精神病理学者クルト、シュナイダーが述べているように「性格の偏りのために自分で苦しんだり、周囲を苦しめる状態に陥った人々」だといえます。
パーソナリティ障害の原因
パーソナリティ障害の原因としては、大きく遺伝的要因と環境的要因が考えられますが、どちらかというと環境的要因の重要性が指摘されています。つまり、幼少時の親子関係や学校における人間関係などが、こうした障害を引き起こす一因であるといえるでしょう。
社会生活のなかで、パーソナリティの偏りが起きる要因として特に大きな影響を及ぼすのは、虐待・犯罪被害・事故や病気・災害などの経験といわれています。
また、パーソナリティ障害の背景に「発達障害」が隠れていることもあるようです。コミュニケーションがうまく取れない、人間関係がうまく築けないことにより、自身を否定的に捉えてしまうような経験がパーソナリティの形成に影響を及ぼすといわれています。
それ以外にも、SNSや社会の変化により、以前は問題にならなかったことが注目されることもあります。
現在、パーソナリティ障害は大きくABC群の3つと10のタイプに分けられています。
A群パーソナリティ障害(奇妙・風変わりな信念や習慣を持つ人)
妄想性パーソナリティ障害
明確な理由や根拠もなく、あるいはほんの少しの出来事から勝手に曲解して
- 人から攻撃される
- 人に利用される
- 人に陥れられる
以上のような不信感や疑念を病的に激しく疑い、対人関係に支障をきたすパーソナリティ障害。
「他人の言葉によく傷つけられることがある」のが特徴的です。
ジゾイドパーソナリティ障害(統合失調質人格障害)
社会的関係への関心の薄さや感情の平板化、孤独が好きで「誰とも親密な関係を持ちたいと思わない・心から信頼できる親友はいない」傾向を特徴とする人格障害です。
失調型パーソナリティ障害(統合失調型人格障害)
行動や話し方、感情表現に奇妙さを持ち、妄想様の知覚や、被害妄想的な疑い深さを持ち、人と関わろうという動機がないのが特徴的です。
例
- 予言・霊・テレパシーのような不思議な現象を感じることがある
- 場違いな反応をしたり、ズレていると言われることがある
B群パーソナリティ障害(情緒や感情のあらわれ方が適切でなかったり・劇的で過度な人)
反社会性パーソナリティ障害
社会的規範や他者の権利・感情を軽視して、人に対して不誠実で欺瞞に満ちた言動を行い、暴力を伴いやすい傾向があるパーソナリティ障害です。
例
- 危険に無頓着で命知らずなところがある
- 違法なことを繰り返してしまったことがある
境界性パーソナリティ障害
情緒不安定パーソナリティ障害とも呼ばれ、不安定な自己(他者のイメージを気にする)感情・思考の制御不全、衝動的な自己破壊行為を特徴とする障害です。
例
- 大切な人に見放されるのではないかと不安になる
- 衝動的に危険なことやよくないことをやってしまうことがある
演技性パーソナリティ障害
演劇的あるいは性的勧誘による行動によって、自己に過剰に注目を引こうとする行動のために、対人関係が不安定になるといった機能的な障害を伴った状態である。過剰に誇張された感情表現も特徴である。
例
- 外見やファッションにはかなり凝る
- 相手の態度や、その場の雰囲気に影響されやすい
- 注目の的になるのが好き
自己愛性パーソナリティ障害
ありのままの自分を愛することができず「自分は優れていて素晴らしく、特別で偉大な存在でなければならない」と思い込むパーソナリティ障害です。
例
- 自分には人が気づかない才能があると思う
- 大成功して有名になりたいと思っている
患者はたいてい「自分が問題である」と認識してないため、精神療法は多くのケースで困難です。
- 女性よりも男性に多い
- 老年者よりも若者に多い
C群パーソナリティ障害(対人関係の行動に自信がなく不安な人)
回避性パーソナリティ障害
嫌われたくないので自分を抑えて人とは付き合う(ドタキャンすることがある)特徴があります。
- 社会的な活動の抑制
- 自分なんかふさわしくないという感覚
- 否定的な評価に対する過敏性
- 社会的な交流の回避
年齢をかさねると病状が治まり穏やかになる傾向があります。
依存性パーソナリティ障害
他者への心理的依存が強く、何事も1人ではできないという特徴があります。
例
- 些細なことでも自分で決められない
- 面倒なことは人にやってもらうことが多い
強迫性パーソナリティ障害
秩序や一定の流儀へのこだわりが強すぎるために、それを完璧にやり遂げようとして、かえって支障をきたし激しい苦痛や社会機能の障害を伴っている状態です。
例
- 細かいことが気になりこだわってしまう
- 完璧に何でもならないと気がすまない
ABC群それぞれの人々は、一風変わった極めて個性的な人々だといえるでしょう。
芸能界では個性が売りであるため、そちらの業界での適正が高いかもしれません。
パーソナリティ障害は病院にいくべきか?
アメリカの研究では、人口の15%の人がパーソナリティ障害であると報告されています(Grantら2004)。しかし治療につながる例は少なく、実際に医療機関を受診するのは、他の精神障害を合併しているケースがほとんどのようです。
医療機関を受診するケースが最も多いのは、若い女性に多くみられる境界線パーソナリティ障害のようです。境界線パーソナリティ障害の方は、しばしば自殺未遂や自傷行為を行うことがあるので、救急医療機関につながるケースも少なくないようです。
わたし自身、パーソナリティ障害の分類について記事を書いているなかで、あてはまる項目がいくつかありました。しかし、社会のなかで就業し、犯罪に手を出すこともなく平穏に暮らしています。
一般的な暮らしのなかで、平穏にすごせてるのなら病院に通う必要はないでしょう。
パーソナリティ障害は多くが複合しやすいので、精神的につらいのであれば医療機関を利用してみてはいかがでしょうか。